こんにちは、ガリオ(@gario01)です
今回は、脱衣所で中国人とバトルをした話をさせてください
~始まり~
物語は、僕が温泉旅館に来ていることから始まります。
その日はガラガラに空いている大浴場で温泉を満喫し、美味しいごはんを食べて就寝したが、僕は一晩寝ると身体中から紫色をした粘着質の汗が噴き出してくるので
翌日、朝風呂に入ることを決めた。
朝早く起きて部屋を出て、浴場へ向かう階段を下りていると
1人の若い男性から声をかけられる
「男性の風呂は…どこですか?」
美空ひばりに寄せた星野源に似ているその男は、少しぎこちない日本語でそう言ったので
これに対し、すこし考え
「僕もこれから行くので、一緒に行きましょうか?」
と答えた。この状況では、浴場まで共に行くのが人の優しさというものだが、その男の要素として美空ひばりが20%ほど割り込んできていたのが僕を不安にさせたので、返答に時間がかかった。
そして美空源はどこかホッとしたような表情を浮かべ、私の後ろをついてきた。
ずっと無言な空間の居心地が悪かったのか、美空源は話し始めた
「あ、あの…ワタシ、タイナから来たんです~」
この急なカミングアウトに全身がヒヤっとする。
え?
タイナ?
どこですか?????
返答に時間が空くと、タイナを、あの常夏で有名なタイナを、各国の大統領が職務を放棄してでもバカンスを楽しみに来るというあのタイナを知らないことがバレるのでとりあえず適当に相槌を打った。
「あぁ~良いところですよね~」
一見、このどんな質問にも対応できる万能返答センテンスをスマートにかましたように見えるが、僕はまだ甘かった。
この次の質問に
「タイナのどんなところが好きですか?」
と問われたら一瞬にして奈落のそこへ叩き落されるからだ。
安心と危険はいつも隣合わせだ。
出会ってまだ60秒もたっていない人間の信用を失う行為は、マックでチキンクリスプと水を頼んで8時間席を占拠する行為と同等に罪深い。
しかしそんな浅はかな僕の考えを見透かしたのか、男は続ける
「チャイナ!チャイナ!チュゴクです」
「あ!あぁ~チャイナね!はるばるようこそ!」
先程の動揺を悟られないように、テンパらないように対応していく。
タイナという国も知っているし、チャイナも当然知っているよ!というスタンスだけを崩さないように振る舞う僕の姿が限りなくダサかったことだけは鮮明に覚えている。
そうこうしているうちに、階段の踊り場につく
そこには男が三人たむろしていたが、どうやら美空源の友人らしい
三人と合流して、浴場にたどり着く。
僕を合わせて五人の男たちは、扉を開けて脱衣所に入っていく。
そう、すっぽんぽんになるために。
すっぽんぽんになると簡単に表現したが、このすっぽんぽんになるという行為は戦いそのものである。互いと互いの本当の【漢】の強さを競うスポーツと表現してもいい。
すっぽんぽんのスポーツで、すっぽんツである。
評価ポイントは
- 誰が最も早くすっぽんぽんになれるか
失格行為は
- タオルで隠す
事である。
これは一見何の意味もない、ただ素早く衣類を脱ぐ行為だと思われているが違う
すっぽんツは、何千年も昔から世界に伝わる競技。
当時は、国と国が戦争になりかけた際、各国の代表が一人ずつ出て
すっぽんツを通して、問題を解決していたという
今となってはこの競技は廃れてしまい、後世に伝えられることも無くなってしまった。
潔くお互いのすべてをさらけ出し、国境を越えて理解しあう。
すっぽんツにはそういった意味が込められている。
これでも僕は、お風呂の王様 関東大会では2年連続優勝をしている身なので自信がある。ましてや今回の大会は、国家の名を背負った究極の戦い。圧倒的秘密裏に行われるオリンピック。敗北したら地下労働送りにされる背水の陣。背水のすっぽんツである。絶対に負けるわけにはいかない。
僕の妄想が独り歩きしていることはつゆ知らず、彼らは室内着に手を伸ばし、服を脱ごうとする。
(勝負は始まった。)
ワンテンポ、いや、ワンティンポタイミングが遅れた僕であったが、全く焦っていなかった。
それは、すっぽんツに人生を捧げてきた男にとって不測の事態ではなかったからだ。
僕の脳に命令された指令は一つだけ。
いつも通り
何百回、何千回、何万回と繰り返してきたその動きを”いつも通り”行うのみ
それ以外の邪念は一切ない。
ゆっくりと右手をズボンの縁に伸ばしたかと思えば、気づいた時にはもうすでに
すっぽんぽんである。
それはまるでセーラームーンの変身シーン。
「ムーンエターナル!メイクアップ!」
無駄のない洗練された熟練の動きで、脱衣所という名のバトルフィールドの空気を完全に制圧した。
「 なんだこのジャパニーズは!!」
「恐ろしく速い!俺でなきゃ見逃してしまう!!」
なんて声が聞こえて来るだろう…。フフフ
と思っていたのは私だけであった。
なんということであろうか、他4人の中国人はすでに…すっぽんぽんになっていたのだ。
わずかに彼らスピードが僕を上回った。その得点差は0.045ティンポイント
まさに一瞬の出来事であった。
負けた。
物心つく頃からすっぽんツに生活の大半をつぎ込んできた私が
己を信じ、ただその速さを、純粋な速さだけを求め、多くのものを犠牲にしてきた私が
負けた。
その明白な事実だけが僕の思考を停止させた。
そして驚くことに、ただ茫然と立ち尽くすフルちんの僕を目の前に、彼らは笑っていた。フルちんで。
これは完全に僕の推測だが、この笑みは決して勝負に勝って嬉しい。とかそんな単純ものじゃない。
彼らはただ純粋に、純粋に、すっぽんツを楽しんでいたのだ。
悠然とたたずむその漢の漢がハッキリと物語っていた。
(ナイスゲーム)
小さな脱衣所にこだまする
誰かがそんなことを言った
~終わり~
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
(ちなみに今日は4月1日ですが、ウソではありません)