そんなあなたのためにこの記事では、一般家庭でも簡単にできる「ミョウバン」を使った皮なめしの方法をご紹介します。
とはいえ、自分自身もツキノワグマの毛皮をなめすのは初めてなのでところどころ至らぬ点もございます。
備忘録として使った材料やなめし液の比率、日数などをまとめてみたので、何かの参考にしていただけたら幸いです。
結論から言うと、制作期間は2週間ほどで掛かった費用は3000円程度です。
ツキノワグマの毛皮をなめす方法
【手順➀】ツキノワグマの皮を剥ぐ
今回はツキノワグマの皮のみ手に入ったので皮を剥ぐ工程の写真はありません。
もしクマが丸ごと手元にある場合は、よく切れるナイフやメスを使って正中線(頭から縦に真っすぐ通る線)に刃を入れていきます。
自分はクマの皮を剥いだことはありませんが、基本的にどの哺乳類も同じようにすれば皮を剥げるはずなので、イノシシと同じように皮と肉の間にある膜や皮下脂肪をナイフで切っていけば皮を剥げます。
すぐになめさない場合は塩漬けして冷凍保存しておく
すぐになめすことができない場合は、大量の塩を塗りこんで冷凍保存しておけば腐らせないように長期保存することができます。
ちなみに自分が貰ったツキノワグマの皮は、9年前に塩漬けにされてずっと冷凍されていたものでしたが解凍したらとてもキレイな状態に戻りました。
「塩漬けや冷凍をすることで細菌や微生物の繁殖を妨げ腐敗を抑えられる」という理屈なのですが効果絶大ですね。
【手順➁】専用のナイフを使って皮の脂をキレイに剥ぎ取る
イノシシの毛皮をなめす際にも使用したこのスキンナイフを使います。
Amazonの商品の中で一番安いですが仕事はしっかりしてくれるので個人的にはおすすめです。
予算に余裕がある人はこっちかな。切れ味が違う
用意するものは
- ツキノワグマの皮
- スキンナイフ(皮剥ぎナイフ)
- バケツ(寸胴、太い塩ビパイプなどなど)
バケツや太くてデカい塩ビパイプなどの凹凸の少ないものに皮を当てて、その上からナイフの刃を入れて脂を削いでいきます。
バケツとナイフの刃を斜めにして、スライスするような動きで皮を破かないように脂を削ぎ落していきます。
皆さんが想像しているよりゴリゴリ強く削っても皮を破くまで到達しませんが、こればっかりは実際にやってみないと力加減は分からないと思います。 黒いつぶつぶ(毛穴)が見えてきたらOKです!
実はこの脂を削ぐ工程がかなり大事で、ここで削ぎ残しがあると完成したときに残った脂が染み出してきてしまい臭いが気になります。
まぁある程度脂を取り除いたら、なめしたあとにハサミやメスで端の方に残った脂を取り除くという方法でもなんとかなるけどね。
ちなみに僕はイノシシ丸ごとやった時に3日かけて合計約8時間かかりました。
今回のツキノワグマでは、2日かけて合計約6時間ほどで終わらせました。
腕もつるしめっちゃ筋肉痛になるけど頑張ってね!
脂を剥いで水洗いしたときに泥が混ざって茶色くなったけど大部分の脂は取り除けています。
でもよく見ると、顔周りや股間付近、奥の皮の端が黄色っぽくなっているのが分かりますね。これは全て剥ぎ残してしまった脂です。
この後ハサミやメスでちまちま除去することになるので結局脂を完全に除去するのに8時間以上はかかりました(笑)
まぁイノシシより大きくて同タイムなら少しは上達したのかな?
鼻や耳の除肉はめちゃムズイのでメス無いと無理もしくはホルマリン
鼻や耳の除肉には細かい作業が求められるので、スキンナイフではできません。
メスを購入してやるしかないです。
もしくは、除肉をせずに10%ホルマリンを注射することで腐敗を防ぐ方法もあります。(今回はメスで除肉するのめんどかったからホルマリン注射したよ)
汚れを取ろうとお湯で洗ったら大失敗
土の汚れを落とそうと、お湯で洗ってしまったのが最悪でした。
毛穴が広がってしまい顔の毛が一部剥げてしまったのです。(修正方法は戦闘民族衣装の作り方を紹介している別記事に記載しました)
ちなみに、イノシシなどでは腹を割く前に熱湯を全体にかけて毛を抜く「湯剥き」という方法があるらしいです。
みなさんは毛皮をお湯で洗わないように気を付けてください。
【手順➂】なめし液につけてタンパク質を変性させる
動物の皮は放っておくと、硬くなり腐敗が進んでしまいます。
ですが、ミョウバンやタンニンなどのなめし材を含んだ「なめし液」に浸けることで皮のタンパク質を変性させることができます。
その結果、柔軟性を保ちつつ腐敗しない革に変わるのです。
なめし液の材料と比率
- 水:10L
- 塩:1000g
- ミョウバン:500g
樟脳(しょうのう)という防虫剤を100gほど加えることでより高い保存性を保つことができます。今回は手元になかったので入れていません。
ツキノワグマの皮が浸かる量を考えて、水を10Lほど入れました。
大きめのビニール袋を切って開いたものを上から被せて、水の入ったペットボトルなどで重しをしてやるとなめし液がまんべんなく行き渡ります。
1週間ほど浸けてみる
1週間ほどなめし液に浸けれたらOKです。
皮を握った時に形が残ればOKです。クマの写真を撮り忘れていたのでイノシシの写真を参考にしてみてください。
【手順➃】キレイキレイで洗浄する
なめし液に浸ける前でも良かったのですが、土汚れや脂の臭いなど汚い部分があるので、大量のハンドソープで洗浄しました。
「なめした後に水に浸けると生皮に戻る!」ということを書いている記事もあったので、標本に詳しい教授に聞いてみました。
教授からは「皮のタンパク質はすでに変性しているから水で洗ったくらいでは戻らない」との返答をいただきました。
事実クマの皮もなめした後にガッツリ洗いましたが、元に戻ることはなく柔らかいままでしたので大丈夫です。
【手順➄】皮を伸ばして日陰で乾かす
ツキノワグマをなめし液に浸けてタンパク質を変性させることができたら、次は乾かす工程に移ります。
適当に広げて干しておくと硬く縮んでしまうので、できるだけ皮を伸ばした状態で乾かします。
また、直射日光で一気に乾かすとあっというまに皮がパリパリになってしまうので、日陰で干しましょう。
大きめの木の板と釘(針金止め)があれば、皮を伸ばしたまま乾かすことができます。
木の板の幅が足りなかったので反対側も使ってみた。
立てかけておくと水が滴るので下に新聞紙や広告を敷いておくと良い。
まだ乾いていないクマの皮は濡れた犬と同じ臭いがします。うん、臭いです。
周りの人からヘイトを集めるのは覚悟でやろう!
1日後
水分が抜け、だんだん乾き硬くなっていくので、カッチカチになる前に石やナイフで皮の繊維を壊し柔らかくしていきます。
とりあえず1日後にはナイフやメスで浅く切り傷をつけて繊維を壊してみました。
2日後
2日目になると外側がかなり乾いてきているのが分かります。
白くなってきているのは水分が抜けて乾いている部分です。
【手順⑥】砥石で削り繊維を壊して柔らかくする(手抜いたらヤバい)
まだ皮が柔らかいうちにできるだけ繊維を壊すことで、乾いて仕上がった時も柔らかさを保つことができます。
たまたま家にあった砥石を使いましたが、かなりよく削れました。
表面を砥石で削ると上の写真のような繊維のカスが大量に出ます。
3日間研究室に通い続けて毎日6時間くらい削りました。実際には上の写真の5倍くらいのカスが出ました。
繊維を削るだけでなく、叩いたり揉んだりして柔らかくしましょう。
ここの作業をしっかしすることで仕上がりがかなり柔らかくなります。
ツキノワグマのなめし皮が完成!
とりあえず、これにてツキノワグマの皮なめしは完了です。
あとは玄関マットにするなりレザークラフトをするなり色々な使い道があります。
ちなみに自分はツキノワグマの戦闘民族衣装を作ってみました。
最後に
今回は、「ミョウバン」を使ってツキノワグマの毛皮をなめす方法をご紹介しました。
イノシシと違って元から皮が薄くて柔らかい印象がありました。柔らかいことで加工しやすいのか猟師の人が腰巻やベストにする気持ちも少し分かります。
皮なめしの種類はいくつもあり、ミョウバンなめしのほかに「タンニンなめし」、「クロムなめし」などが有名です。
なめし方によって仕上がりが変わるので、今後も色んな自然素材を使って皮なめしをしていきたいと思います。
おわり